
書籍や教科書を手がける老舗印刷会社・株式会社加藤文明社が、eスポーツチーム「SCARZ」のスポンサーになった。一見遠い二つの世界。だがその背景には、「取引先ではなく、仲間として界隈に入りたい」という考えがあった。同社代表取締役社長の加藤様に、SCARZとの出会いから選定の理由、そしてこれからを聞いた。
導入サービス
SCARZ 年間スポンサー
実施事項
募集記事運用/ストーリー記事作成/スカウト運用/デザイン/写真撮影
お話を聞いた人
株式会社加藤文明社
加藤様
── はじめに、御社がどんな会社かを教えてください。
1914年創業、今年で112年目を迎える印刷会社で、私で4代目になります。書籍や教科書の制作から印刷・製本、図録や美術館向けの高品質な印刷物を得意としていて、割と固くて真面目な印刷物を手がけてきました。スローガンに「Century Books(センチュリーブックス)」を掲げていて、100年先の未来を見据え、変わりゆく時代の中で「本」という文化を守り続けていくことを約束しています。

── 本の印刷だけにとどまらない事業もされていますね。
1冊の本の周りには、たくさんのビジネスがあります。デザインやデータ制作、本を売るための販促、グッズ、IP事業の支援まで。アーティストさんやクリエイターさんと一緒に高品質の小ロットの書籍製造を手がける「atelier gray®(アトリエグレイ)」も、その一つです。
── 印刷会社とeスポーツチームというのは意外な組み合わせです。ゲームやeスポーツへの関心はあったのですか?
実は私自身、子どもの頃からのゲーム好きなんです。今でも息子と一緒にやるくらいで、ゲームにアレルギーどころか、かなり理解がある方でして。若い人を引きつける魅力も、ゲームの歴史も、長く見てきました。
── その素地があったところに、SCARZの話が入ってきた。
きっかけは、長くお付き合いのあったJ. フロント リテイリンググループのパルコさんの担当者様からの一報でした。「eスポーツチームがグループに入る」と。ゲームコミュニティの黎明期からいる老舗チームを、J. フロントリテイリングさんがグループに迎える。その判断に、ものすごく興味を持ったんです。「なぜ、あの大企業がeスポーツに投資するのか」と。
── そこからご自身で足を運ばれたそうですね。
SCARZとパルコが共催していた「HYPE UP(ハイプアップ)」というイベントに行ったんです。2023年の11月、渋谷でした。そこで一番の衝撃を受けました。ゲームオタクのお兄さんやおじさんが集まっていると思っていたら、全く真逆で。客層が若くて、女性ばかりだったんです。

── それが、推し活の凄さを実感した瞬間だったんですね。
まさにそうです。その衝撃で、eスポーツというプラットフォームが、ファンダムやIPビジネスとして大きな潜在力を持っていると、目の当たりにしました。だったらより深く関わろう、と。それでスポンサードという形に踏み込んでいったんです。
── eスポーツへの関わり方は、他にもあったと思います。カフェの経営なども検討されたとか。
はい。自社のテナントを活かしたeスポーツカフェも考えて、秋葉原や渋谷など7、8軒の店舗を実際に見に行きました。店員さんにインタビューして、運営状況やスタイルを聞いて回ったんです。ただ、水道橋のうちのテナントでは地域柄、採算が難しいと判断しました。
── ちょうどその頃、社内でも新しい動きがあったそうですね。
そうなんです。ちょうど私たちが、ソリューション開発本部という新しい事業を立ち上げて、本部長を兼任していた時期でした。グッズ製造を軸にした新規事業で、0→1のフェーズを社長の私も一緒になって走りはじめていたんです。出版社様からグッズ製造の引き合いをいただくなかで、eスポーツの推し活市場が、まさに我々の展開先として重なると感じていました。
── では、なぜ発注や取引ではなく、スポンサーだったのでしょう。
各チームに対して「うちはこういうことができるので発注してください」と営業することもできたと思うんです。でも、それだと相手にされない。それに、外の世界にいては分からないことも多いと思いました。たとえばSCARZのグッズを実際に一緒に作ってみると、どんな設備を入れて、どこに人を配置すればいいのか、どんなニーズがあるのかが、リアルに分かるんです。中に入るからこそ見えるものがある。だから、仲間として界隈の内側に入るべきだと思ったんです。
── 費用を負担する以上、リターンをどう捉えていますか。
僕は、これは界隈への“入場チケット”だと思っているんです。伝統的なスポンサーシップ、つまりお金だけ出してロゴを露出して、スポンサー特典として営業活動や社員イベントなどで選手の貴重な時間を奪うようなことはしたくないんです。
せっかくやる以上は、一緒に双方の価値を高めないと意味がない。こちらがコミットしないなら、やる意味もないんです。それに、一般的なスポンサーと比べると当社は、面倒くさいスポンサーだと思いますよ(笑)。いろんなことをお願いするし、いろんなことに絡んでいく。でも、それは僕らが本気で絡みたいからなんです。一緒にやりたいし、一緒に価値を最大化して、いい仕事をして、いいお酒を飲みたい。そういうスポンサーシップを求めているんです。
── その発想は、どこから来ているのですか。
アーティストさんやクリエイターさんと併走して、本を作る「atelier gray®」という場所を提供しているサービスでの経験が大きいですね。「印刷会社です、本を作らせてください」と言っても、「なんであなたのところで」となる。じゃあ我々が何の価値を提供すれば、相手が本気で向き合ってくれるか。ノウハウや人、設備、場所を先にご用意することで、本気だと分かってもらえる。スポンサーシップも、まったく同じ発想でした。
── 数あるチームの中で、SCARZを選んだ理由は。
黎明期から界隈を育ててきたチームに、私は魅力を感じるんです。2022年にJ. フロント リテイリンググループへ入ったことも、次の挑戦のために必要な安定した経営基盤を取りにいった、素晴らしい判断だったと思っています。その風土が、僕らは好きなんです。常勝を目指すチームを作ることも素晴らしいですが、メンバーや組織が育まれる仕組みを作り、時々全盛期が訪れ、負けが込み、その反省からまた復活する。何事にもいい時と悪い時があり、それをファンや関係者で一緒に乗り越え、末永く愛される。そんなチームって魅力的じゃないですか。

── スポンサーになってから、実際にどんな関わり方をされていますか。
とにかく現場に足を運んでいます。イベントや大会観戦、年末にはスタッフと一緒に練習を見て、率直な話をしながらお酒を飲んだり。SCARZ運営の主力スタッフが退職した後に、「残った我々でこれから何が実現できるか」をスタッフと議論したのも印象に残っています。
── YouTube動画の制作もご一緒しましたね。撮影したストリーマーからは、「また撮影したい!」と好評です

SCARZストリーマーのストーム久保さんの名刺制作のため、工場見学を含む撮影・動画コンテンツを一緒に企画しました。普段は立ち入れない印刷現場が舞台です。ご本人にもすごく楽しんでもらえました。ストリーマーにとってはコンテンツになり、我々にとっては本や印刷物を作っている様子を一般の方々に知っていただける機会になりました。また、ストーム久保さんのような方が当社の工場に興味をもってくださったというのは工場で働く社員にとっても嬉しい出来事です。印刷会社の価値を新たなカタチに再定義し、魅力的に発信していただきました。
── スポンサーになって、実際にどんなメリットがありましたか。
これはスポンサーを検討している企業さんにも伝えたいんですが、大きく4つあります。まず採用。これが本当に効くんです。最終面接で「うちのホームページで何が印象に残ったか」と聞くと、「SCARZというeスポーツチームのスポンサーになっているという記事です」と答えてくれる。印刷や出版って、同じ業界を併願する応募者が多いんですが、その中で圧倒的に印象に残る。「印刷会社が新しい事業でeスポーツをやっている」というだけで、閉鎖的に見られがちな業界の中で、ポジティブなメッセージになるんです。人事の採用担当も、はっきり効果を実感しています。
2つ目は、投資判断の精度です。中に入ることで、どんな設備や人を用意すれば貢献できるかが分かる。想像で投資する必要がなくなる。これは先ほどお話しした通りですね。
そして3つ目、これが面白いんですが、企業同士の化学反応が生まれるプラットフォームになっていることです。自社だけでは、もう成長も新しい発想も生み出しきれない時代です。SCARZのスポンサー交流会や情報発信イベントが、新たな取り組みや事業が生まれる場になっている。しかも、それをSCARZの事業目的としてちゃんと掲げてくれた。今後さらに、スポンサー企業やステークホルダーとの化学反応が起きていくと期待しています。
4つ目、これは後で気が付いたことなんですが、グループへのコミットを表明できることです。J. フロントリテイリンググループと付き合いのある企業は無数にあります。僕らはSCARZのスポンサーになることで、同グループの事業方針を理解し、「既存はもちろんのこと、新規事業もしっかり応援していきます」という姿勢を表現できます。これは、J. フロントリテイリンググループに関わる企業にとって、非常に意味のある姿勢だと思っています。
── 今後、SCARZとどんな関わりを期待していますか。
SCARZグッズの制作も本格化してきました。期待しているのは、SCARZが描く「エコシステム」の構想です。選手やクリエイター、コーチ、スポンサー、ファンが協働して、SCARZがそのハブになる。この方向性に、強く賛同しています。
── 加藤様ご自身のアイディアもあるそうですね。
書籍制作のプロとして温めているのが、チームのシーズン写真集です。表紙やページをファンが選べて、1冊から製造できるオンデマンド方式なら、在庫を抱えずに展開できる。限定版や制作過程の動画と組み合わせれば、印刷会社ならではのグッズになるはずです。せっかくご縁をいただいたので、一緒に盛り上げて、いいコンテンツをファンの手元に届けたいですよね。
── 最後に、SCARZへの評価を聞かせてください。
スタッフも経営陣も、とても誠実だと感じています。成績はまだまだこれからですが、新しい選手も集まってきていますし、諦めずに上を目指す姿勢が
SCARZらしくて楽しみでしかありません。ファンと一緒に、末永く応援していきたいです。いつか日本一、世界一まで行って、最高のエンターテインメントを見せてくれたら、これ以上のことはありません。

【事例】ゲームに詳しくないから、eスポーツチームと組む──西松建設は、どのようにゲームを社員間のつながりに変えたのか
社長や室長がかつて手がけた現場が、ゲームの問題として画面に映し出される。すると当時の思い出や裏話が次々に語られ、若手社員がその話に耳を傾ける。西松建設の技術戦略...
CLIENT
西松建設株式会社
SERVICE
建設業界
SCOPE
社内eスポーツイベント「N JOY CUP」の企画・運営

【事例】BtoB企業がeスポーツスポンサーで得た"桁違い"の反響 ― アルテクナが語る4年間のリアル
BtoB技術系企業の株式会社アルテクナが、eスポーツチーム「SCARZ」のスポンサーを始めて4年。「新卒の半数がSCARZを知っている」「SNSアクセスが通常の...
CLIENT
株式会社アルテクナ
SERVICE
人材派遣
SCOPE
採用 / SNSマーケティング / ノベルティ制作
導入事例一覧を見る

会社名
株式会社加藤文明社
業界
印刷業界
事業
出版印刷、教科書、学習参考書、一般書籍、デジタルコンテンツ企画、グッズ制作 等
従業員規模
約160名
創業年
1914年
エリア
東京
URL
https://www.bunmeisha.co.jp/

CONTACT
お問い合わせ
まだ取材先やプランが決まっていなくても構いません。
現在の課題を伺い、適した進め方を一緒に整理します。